【エコプロ2018に参加して その①】
今回から何回かに分けて、少しまじめな記事を…
先日参加した【エコプロ2018】というイベントについて、自身が感じたことや見聞きしたことを少しずつまとめていきたい。
イベントの概要としては…
各産業界の企業が最新の技術や工夫を用いたエコな取り組み事例を紹介。
また、企業だけでなく、自治体や政府のSDGsへの取り組みや行政活動、NGO・NPO団体の活動発信の場ともなっている。
小さい子供たちが楽しみながら環境について、またSDGsについて学べる仕組みや仕掛けもなされており、会場内には平日にも関わらず小学生の姿も多数見られた(おそらく社会科見学等で来ているのだろう…いいなぁ)。
エコプロについての詳しい説明は長くなるので省くが、以下にリンクを載せておくので興味のある方は是非覗いてみてほしい。
開催期間:2018年12月6日(木)~8日(土)※筆者は6日の部に参加。
階催場所:東京ビッグサイト 東1~6ホール
会場内展示と合わせて、筆者はエコ&SDGsステージで開催された基調講演+パネルディスカッションに参加。これがなかなかに興味深く、ここに参加できただけでも来た甲斐があった!と実感したので以下に内容を記す。
時間:13:00~14:30
- グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)
業務執行理事 後藤敏彦氏
グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンについて詳しくは以下のURLを参照↓
「SDGsをどう伝えるか?」
モデレーター:GCNJ理事 川口真理子氏
前半は国連のグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンの業務執行理事である後藤敏彦氏より、SDGsの大枠のおさらいを含めた「企業としてのSDGsの意義再認識」のための場が用意された。
持続可能な発展を目指す現代で、SDGsを企業のCSR戦略に取り入れるため、また、最終的に企業がビジネスを通して社会課題を解決できる世の中を目指すため、
①今それぞれが具体的にどのような位置にいて、
②これから目指していくことは何になるのか、
を再確認するためのお話であった。
後半は、日本でなかなか認知度の上がらないSDGsを、「伝える」ということをお仕事の鍵にしている小田氏(フジテレビ)、石田氏(朝日新聞)、川廷氏(博報堂DYホールディングス)の三人がそれぞれの社内での取り組みを発表、モデレーターの川口氏(GCNJ)を中心に、取り組みの経緯から社内での意識付けまでかなり掘り下げた内容のお話があった。
今回は、主に前半部分について見聞きした内容を書き、後半の内容については次回の記事にしようと思う。
後藤氏によると、現代は
modern → postmodern
という時代の移り変わりを発展の在り方にも当てはめずには通れない時代だという。
要は、進歩や発展に必要な資源を「無限」と考える時代(modern)はすでに終わりを迎え、現在は「有限」な資源をいかに効率よく、大切に使いながら持続可能な発展を目指すかを常に考えるべき時代(postmodern)だという趣旨である。
後藤氏は、SDGsとパリ協定は双子のようなものであるという。
ともに国際的な枠組み、取り組みであり、大きく「持続可能な発展」を目標にしていることからも、相互関連性があるためである。
また、実際に企業がSDGsやパリ協定を意識した戦略を取り入れていく際、一般的には大きく三つの段階を経て導入が行われているそうだ。
以下にそれぞれの段階の特徴を記す(例は今回の講演やリサーチをもとに筆者自身が考えたもの)。
【SDGsを企業のCSR戦略に取り込み、さらにCSRのその先を目指すための三段階】
- 第一段階:SDGsの17のゴールを、自社にすでにある取り組みのどこに当てはめられるのか考え、定義づけを行う。
例えば、
社内の再生可能エネルギー事業への取り組みは、
ゴール9「産業と技術革新の基盤を作ろう」
ゴール13「気候変動に具体的な対策を」
ゴール12「作る責任遣う責任」 にも当てはまるかもしれない。
または、社内で取り組んでいる食品ロス廃止に向けた工夫は
ゴール12「作る責任遣う責任」に当てはまるだろう。
さらに、今までであればまだ食べられるのにも関わらず廃棄になっていた食品をフードバンクなどの団体に寄付しているのであれば、
ゴール2「飢餓をゼロに」
ゴール1「貧困をなくそう」
にも貢献していると言える。
- 第二段階:169のターゲット(17のゴールそれぞれに紐づけられたターゲットを合わせると169にものぼる!)を社内に導入することによるリスクと機会の見極めを行う。
例)169のターゲットを活かしてどのような新しいビジネスが創出できる?
逆に、それらを導入することで失うもの(=リスク)って何だろう?
→費用は?人員不足の解消は?etc…
- 第三段階:存在する社会課題をビジネスでもってどのように解決できるのか考え、行動する。
例)社会で雇用機会の均等が問題とされていたら、自社がそれに関連してどのような取り組みを行えるのか考え、行動に移す。
後藤氏によれば、現在多くの大企業の取り組みは第二段階に位置するという。
そのため、まずはそれぞれが今三段階中のどこにいるのかを見極め、もし第三段階に踏み込む際の指針が必要であれば、以下のような資料を参考にし、具体的施策に向けて動き始めることが望ましいとのことであった。
- IGESレポート
https://pub.iges.or.jp/pub/SDGs_Business_in_Practice
- SDGs Communication Guide
http://www.dentsu.co.jp/csr/team_sdgs/pdf/sdgs_communication_guide.pdf
- SDG Compass
https://sdgcompass.org/wp-content/uploads/2016/04/SDG_Compass_Japanese.pdf
- SDGs 産業別手引き
https://home.kpmg.com/jp/ja/home/about/sus/sdg-industry-matrix.html
- Pwcレポート
https://www.pwc.com/gx/en/sustainability/publications/PwC-sdg-guide.pdf
しかし、基調講演の後、実際に会場内展示を見て回った感想としては、具体的に第三段階の「ビジネスを活かした社会課題の解決」に向かって動き出している企業もすでに多く存在するという印象であった(詳細は別記事にて後ほど)。
そうした光景を目の当たりにして、これからはむしろプロボノ企業をわざわざ目指さなくとも、社会的意識をもってビジネスをしていくことが当たり前の世の中が少しずつ形成されていくのかもしれないと感じた。
実際に、CSRを超えた企業の社会的活動は欧米を中心に大きな意義を持ち始めている。有名な企業の例を挙げると、米アパレルメーカーであるティンバーランドは、そうした課題に向けて業界でもいち早く行動を起こしたことによって、同業他社を牽引する役割を担っていると言える。
商品につけたエコロジカル・フットプリントを示す「栄養価ラベル(!)」が良い例だろう(栄養価という名前については、食品業界からインスピレーションを受けたらしい)。
消費者は自分の購入する商品が
どこで作られ、
その過程でそれだけのエネルギーが使用され、
そのうちのどれほどの量が再生可能エネルギーから賄われたものなのか、
といった情報をラベルからカジュアルに確認が可能というわけだ。
現CEOであるジェフェリー・シュヴァルツによれば、この「栄養価ラベル」には、消費者に自分たちの商品購入が環境や地域社会に与える影響を理解させる役割にとどまらず、同業他社に「自分たちも同等の基準をクリアしないと恥ずかしい」と感じさせる役割をも担うことを期待しているという。
現に同ブランドは環境面での基準に留まらず、児童労働の根絶、最低賃金の導入、労働時間の基準の導入を含めた数々の行動規範を設け、それらが地域社会に与える影響もラベルに示しているのだ。
さて、シューズに足を通そうと箱を開ければ、そこにはまさに靴で残せる足跡とエコロジカルフットプリントをかけ合わせたメッセージが登場する。
「あなたはどんなフットプリントを残しますか?」
こうした活動が世間的にも認知され、フォーチューン誌の働きたい会社ベスト100の常連でもあるティンバーランドの例を見れば、上記のような努力を「コスト」として捉えるのはもはやナンセンスだと言える。
サステイナビリティは、まさにビジネスを発展させるための恰好の手段の一つになりつつあるからだ。
日本でも、企業のサステイナビリティ意識が消費者が商品・サービスを選択する際の一つの軸となる日もそう遠くないだろう。
次回の記事では、講演の後半で発表された、このような社内での具体的施策に実際に取り組んでいる三社の面白い取り組みを紹介したいと思う。